顕微鏡の基礎

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2. 顕微鏡の光学系

2. 6 照明光学系

図2-9 反射ミラー

試料の微小部分を拡大して観察する顕微鏡では、明るさを確保するための照明(Illumination)が不可欠です。最もシンプルな照明装置は、反射ミラー(図2-9)で、光源は北側の窓やくもりガラスの窓などからの自然光(直射日光は避けること)、あるいは電気スタンドなどの人工光源を利用します。反射ミラーは表裏が平面と凹面になっているものが多く、倍率の低い観察の場合は平面側を、高い観察の場合は凹面側を使います。さらに試料面に光を集めるためにはコンデンサレンズ(集光器:Condenser)を使います。

一方、本格的に観察する場合には専用の照明装置を使う必要があります。この場合、照明系に求められる要件として、白色で十分な明るさがあること、観察範囲全体が均一に照明されること、対物レンズの最大NAを満たしていること、が挙げられます。通常の光源(タングステンランプ、ハロゲンランプ等)はフィラメント構造になっているため、直接光源の像を試料面に作りますと照明ムラが目立ってしまい、特に倍率の低い観察や写真には不向きです。こうした問題を解決し、前記要件を全て満たす照明方法がケーラー(Koehler)照明法です。これは、図2-10に示すように、光源の像をコンデンサレンズの前側焦点位置に作るもので、試料に対して光源像は無限遠にあることになるので照明ムラは生じません。ケーラー照明では、光源像位置に開口絞り(明るさ絞り)を、また試料面と共役(物体と像の関係にあること)な位置に視野絞りを置くことができ、これらを調節することにより最適なコントラストが得られます。このため、ほとんどの高級顕微鏡はケーラー照明法を採用しています。

光源には、高輝度で色温度(光源の光の色度)も高いハロゲンランプが多く使われるようになりました。しかし、完全な白色光を得るためにはカラーバランス(色温度転換)フィルタを使わなければなりません。また色温度はランプの電源電圧によっても変わるので、調整後に明るさを変える場合は厳密にはニュートラル(ND)フィルタで行うことになります。

図2-10 ケーラー照明法の構成