顕微鏡の基礎

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1. 顕微鏡光学の基礎

1. 1 レンズによる像

レンズを使って物体の像をつくる方法には、カメラ撮影のようにフィルムや撮像素子に実際の像(実像Real imageといいます)をつくる方法と、ルーペLupe(虫眼鏡・拡大鏡)のように見かけの像(虚像Virtual imageといいます)をつくる方法とに大別されます。図1-1は、凸レンズにより実像をつくる様子を示したものです。a) は物体がレンズの前側焦点Fよりずっと遠くにある場合で、縮小された倒立の実像が得られます。b) は物体がFよりわずかに遠くにある場合で、拡大された倒立の実像が得られます。このとき、レンズから物体までの距離をa、 像までの距離をb、レンズの焦点距離をf 、実像の倍率(Magnification)M とすると、それぞれの関係は次の式で与えられます。

数式

一方、図1-2は凸レンズにより虚像をつくる様子を示したもので、物体をレンズの前側焦点Fよりわずかに近くに置くと像はつくられませんが、レンズのすぐ後ろに目をもってくると拡大された正立の虚像が見えます。この場合、物体とレンズの前側焦点との位置関係によって虚像の大きさは異なります。ルーペの表示倍率M Lは、虚像が目から250mm離れた位置(これを明視距離 Reference viewing distanceといいます)につくられる場合に、その虚像が実物の何倍になるかを示したもので、レンズの焦点距離をf とすると、 M L=250/f で与えられます。

図1-1 凸レンズと実像
図1-2 凸レンズと虚像