顕微鏡の歴史

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6. 各種顕微鏡と周辺機器の始まり

6-2 金属顕微鏡

図27

これまでに述べてきた顕微鏡は、主に標本を透過光で照明し観察するものでしたが、金属など不透明な標本に対しては、1722年にフランスの科学者レオミュール R. Reaumurが金型鋳物を顕微鏡で見てその構造を検査したのが最初です。

1785年にはリーベルキューンJ. Lieberkuhn(ドイツ)が凹面反射鏡を使い落射照明により不透明物体の表面を観察しています。不透明標本の観察専用に顕微鏡が作られたのは、それからさらに後のことで、1856年にイギリスのソービー H.C. Sorby が鏡筒に反射鏡を挿入して岩石の表面を照明する顕微鏡で観察を行いました。また彼はウェナム(前出)に作ってもらった高倍率の双眼顕微鏡により鋼材も検査し、パーライトを発見しました。

さらに1891年、マルテンスA. Martens(ドイツ)により鉄鋼のマルテンサイト組織が発見され、顕微鏡による金属表面組織の研究(金相学)は急速に発展しました。

一方、フランスのルシャトリエ Le Chatelier(化学平衡に関する法則で有名)は、試料の表面の垂直出しを容易にするために、金属試料面を下向きにして台に載せ、下から対物レンズを通して光を照射する倒立型顕微鏡を考案しました。このため倒立金属顕微鏡はシャトリエ型とも呼ばれていました。初期の落射照明装置は対物レンズの後方に45°の反射鏡またはプリズムを置き、対物レンズを通して照明する方式(図27)でしたが、光路の半分が割かれるため像の劣化があったため、その後平面ガラスを45°に配置するようになり、さらに半透膜技術が開発されるとハーフミラーに置き換えられました。このミラーは薄くて精度がよくても理論的には像に収差を生じさせ、ゴーストも出るため、ライヘルト社、ツァイス社、 ライカ社では鏡筒長を無限遠に設計した光学系を1920年代から30年代 にかけて採用しました。