顕微鏡の基礎

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3. 顕微鏡の種類と構造

3. 3 双眼実体顕微鏡 stereomicroscope

物体を立体的に見るためには、左右の眼による視差parallaxが必要です。双眼実体顕微鏡は、試料を異なる方向から観察するための二つの光路を持つことによって立体像を作る、低倍率・広視野・長作動距離の顕微鏡です。また鏡筒内の正立プリズムにより観察像は正立となっています。主に精密・電子工業における組立て・検査の作業や、医学・生物学における解剖・細胞操作などに用いられています。また脳外科や眼科で使われる手術用顕微鏡も、顕微鏡本体部分は実体顕微鏡です。

双眼実体顕微鏡は、一定の内向角(12°程度)をもった二つの光軸上に左右2対の光学系を配置した内斜型(図3-3a、グリノー Greenough型ともいいます)と、一つの対物レンズにより作られた互いに平行な二つの光軸上に左右2対の光学系を配置した平行光路型(図3-3b、単対物型ともいいます)の2種類に分類できます。それぞれの光学系構成を図3-4a,bに示します。前者はコンパクトな構成で操作も容易なため広く使われています。また後者は、システムの拡張が容易にできる利点があり、高級実体顕微鏡に多く採用されています。

倍率の変換はズーム方式によるものが一般的となっていますが、対物レンズやコンバージョンレンズの切換えでも行われます。一般の顕微鏡に比べると、同じ倍率でも開口数が小さいため解像力は劣りますが、物体側の焦点深度は深いので作業にはこのほうが向いています。実体顕微鏡では、蛍光灯やライトガイドを使った簡易的な照明が多く使われていますが、高級実体顕微鏡では透過照明装置や、暗視野照明装置、同軸反射照明装置なども用意されています。

図3-3 双眼実体顕微鏡
図3-4 双眼実体顕微鏡の光学系構成