顕微鏡の基礎

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3. 顕微鏡の種類と構造

3. 2 倒立顕微鏡 inverted microscope

正立顕微鏡に対し、試料を下側から観察する構造のものを倒立顕微鏡といいます。対物レンズはステージの下にあり、正立顕微鏡と同じ観察姿勢となるように、光軸は途中で斜め上方に折り曲げられて接眼レンズに至ります。光路が長くなるため、対物レンズの一次像を接眼レンズまでリレーする光学系が内蔵されています。倒立顕微鏡も照明法により、透過型と反射型(落射型)とに分類されます。

医学・生物分野では、主に組織培養検査に透過型倒立顕微鏡(図3-2a, b)が用いられることが多く、簡易型のものは培養顕微鏡とも呼ばれます。これは培養容器(シャーレ)を底から観察する必要があるためで、透過照明系はステージ上に配置され、作動距離の長いコンデンサが組み合わされます。また容器の厚さは、通常のカバーガラスと比べかなり厚いため、培養用の対物レンズもこれに対応した設計となっており、作動距離も長くなっています。またステージは固定式で、焦点合わせは対物レンズを上下して行います。このことは、マイクロマニピュレータで細胞操作を行う場合などにどうしても必要なことです。倒立型の生物顕微鏡は、生きた試料を観察するのに便利なため、最近では最先端のバイオ研究にも盛んに使われるようになっています。

一方、工業分野における倒立顕微鏡(図3-2c)は、主に金属材料の研究・検査に用いられています。研磨された金属表面を下向きにしてステージに置くだけで、観察面の水平出しができることや、大きく重い試料でも固定されたステージに載せることができるためです。

図3-2 各種倒立型顕微鏡